わかりやすい日本語を書くために
日本語特有の曖昧表現

時制表現からくる曖昧さ

英語の勉強をはじめた頃、時制表現でずいぶんとまどった経験を持った人が多いのではないでしょうか。時制とは言語学の用語で、述語(主に動詞)によって表現される事柄、出来事などが、表現されている時点からみて、現在・過去・未来のどれにあたるかといった時間的関係を表現する形式をいいます。日本語の動詞では「‐た」によって過去が表示され、現在・未来は「‐る」などによって表示されることが多くなります。また、注目している時点において動作が継続中か、完了しているかなどを表す要素である相と区別 されます。英文法でいうところの、進行形、完了形などが該当します。
「きょうは誕生日だった」のように、「あっ、あった」などの例を根拠に、日本語の「‐た」は過去を表すのではなく、日本語には時制はないとする意見があります。たとえば、日本語の「‐た」によって言及される状態は、例えば英語の過去形によって言及される状態とは異なり、現在も継続していても構わないという非常に曖昧な時制を表現するようになっていることからも、日本語に時制はない、という意見がでることは理解できます。しかし、暗黙の内に、時制を私たちは文章から読み取るというのも事実です。外国語ではうるさいくらい指示される時制を整理すると、

 
単純形
進行形
完了形
完了進行形
現在
現在形
現在進行形
現在完了形
現在完了進行形
過去
過去形
過去進行形
過去完了形
過去完了進行形
未来
未来形
未来進行形
未来完了形
未来完了進行形

のように、12に分けることができます。分けることができても、これらの時制を英語のように厳密に日本語で区別 することはほとんど不可能と言っていいでしょう。しかし、日本語の動詞や助動詞、形容詞の変化にも時制表現があります。文法用語で「時制」というと、「彼は食べる(現在形)」、「彼は食べた(過去形)」のように、文法的に判断できる時制のことを言います。しかし、文脈をきちんと構成することで、文法でわかる以上に細かく時間軸を文章の中に収めることも可能です。文法的な時制だけでなく、文脈からわかる時制が混乱しないように文章を書くときには注意が必要となります。日本語が持つ時制の曖昧さを排除する方法は、時間軸を使って整理したチャートを書いておくことが重要となります。
人間は、ひとかたまりの情報(たとえば1つの文)を読むときに、その中の文脈は1つであるという無意識の前提を置いて読もうとします。そして最初に目にした情報と最後に目にした情報の印象がもっとも強くなるため、文の最初と途中で時制、時間が違っている場合、特にそれが逆行していると混乱を招きがちになります。ですので、文章を書くときは「時制の混乱」にはくれぐれも注意してください。